今年一番印象に残っている本と言えばこれだ。
マルグリット・デュラスの戦争ノート。
四冊の手書きの草稿ノートをまとめた本なのだが、それぞれのノートがモノとしても作品としても完成度が高く、読み応え見応えがする。
これを読むと、例えば『愛人』が具体的で多様な「貧しさ」について書く過程の中で生まれた作品だとわかる。
彼女の少女時代の有名な出で立ち、男物の帽子、すり切れたワンピース、ヒール、媚態、幼ささえも、彼女たち家族があらゆる意味でとても貧しかったということを意味しているのだとわかる。
夫に死なれた母親の事業がことごとく失敗し、兄たちは粗暴で、隣人たちは侮蔑的
で、「私」はついに卑しく醜い現地の男の白人の女への欲望に身を委ねるのだが、記述は起伏に富んでいて、ユーモアがあり、愛がある。
例えば、「私」は、暴力を振るう兄やそれを容認している母のことを憎みながらも、その異常性について自分以外の誰かが責めるのを許さないし、その実深く愛している。読む側が、彼女と同じように彼らを愛してしまうほど彼らのことを愛しているのだった。もちろん文字は痕跡でしかない。しかし言葉は、鳴り続ける和音とか震動のようなもので、この本はまだずっと聞こえていて欲しい音なのだ。
マルグリット・デュラスの戦争ノート。
四冊の手書きの草稿ノートをまとめた本なのだが、それぞれのノートがモノとしても作品としても完成度が高く、読み応え見応えがする。
これを読むと、例えば『愛人』が具体的で多様な「貧しさ」について書く過程の中で生まれた作品だとわかる。
彼女の少女時代の有名な出で立ち、男物の帽子、すり切れたワンピース、ヒール、媚態、幼ささえも、彼女たち家族があらゆる意味でとても貧しかったということを意味しているのだとわかる。
夫に死なれた母親の事業がことごとく失敗し、兄たちは粗暴で、隣人たちは侮蔑的
で、「私」はついに卑しく醜い現地の男の白人の女への欲望に身を委ねるのだが、記述は起伏に富んでいて、ユーモアがあり、愛がある。
例えば、「私」は、暴力を振るう兄やそれを容認している母のことを憎みながらも、その異常性について自分以外の誰かが責めるのを許さないし、その実深く愛している。読む側が、彼女と同じように彼らを愛してしまうほど彼らのことを愛しているのだった。もちろん文字は痕跡でしかない。しかし言葉は、鳴り続ける和音とか震動のようなもので、この本はまだずっと聞こえていて欲しい音なのだ。
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