白茶

2009年6月9日 ポエム
白茶
 ここ一ヶ月か二ヶ月か、ずっと中国茶が飲みたいと思っていた。もちろん、手近なところでウーロン茶とかジャスミン茶の茶葉でも買ってくればよさそうなものだが、茶盤の上に茶壷をおいて、大きなお湯さしで上からじゃばじゃばお湯を注いで飲む中国茶が飲みたいのである。
 よく渋谷で映画を見た後などは、道玄坂途中の脇道にある中国茶専門店の三階に登って、茶道具を使って、いつまでもお茶を飲んでいる。それを最後にしたのは、今年はじめ頃だった。そのときは、店の階段途中に、アイドルグループが取材に来たときの記事や写真が貼ってあって、最初はおやと思っただけだったが、お茶を飲んでいる間に、その記事の中の一人によく似た雰囲気の青年が(といっても別人にちがいないが)かなり年配の女性を連れてやって来て、すごくもってまわったおねだりをするのが気になった。女性の方はしきりに、引っ越し祝いに何が欲しいか聞いているのだが、男の方は、欲しい物はない、お金以外は、と言う。それも、物をプレゼントされるのがいかに苦痛か、本当に趣味に合うものなんてわずかしかないのに、という話を詳しくした上で言う。年配の女性は、でもお金っていやだわ、一緒に何か選びましょう、と言う。すると、男は、突き放したように、それではお気持ちだけで、と言って話をそらす。窓際のすぐ横のテーブルだったので、声がよく聞こえてしまう。塔のてっぺんのすごく居心地のいい店の印象が、そんなことがあって変わってしまった。
 それでというわけではないが、今回は、渋谷じゃなくて、横浜中華街の中国茶専門店を目指した。夕刻で、待ち合わせて来た夫は、一通り食べ歩きをしたくて、元町と石川町の間を行ったり来たりした後に、開帝廟通り近くのお目当ての店に入る。木枠の窓が開け放されていて、金魚の絵が書かれた鉢があちこちにおいてあって、なんか懐かしい気持ちになるお店である。メニューを見ているうちに、まだ飲んだことがない白茶の白牡丹が飲みたくなる。これが大正解で、これを飲みなさいと身体が最初から命じていたかのようである。白いお茶と言われるだけに、薄い色だけど、とても豊か、深い新鮮な香り。果実の芯を思わせる苦みがふわっとくる。私は、ボディという言葉が浮かぶほどしっかりした味だと思うけど、夫はさっぱりしていると言う。華奢だけど美人なお茶だと思う。夫も私も鉄観音のような青茶を頼まなかったせいか、茶盤の上でじゃぶじゃぶやったり聞香杯を嗅いだりするための茶道具一式が出てこなかったのはちょっと残念だった。けど、白牡丹の白桃色を鑑賞するにはガラス製の茶器があう。三煎目くらいから、汗が吹き出てくるような感じになって、ちょっとハイ??なってしまう。気に入ったので買って帰って、また夜遅くに飲んだのだった。

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